返事をしないオーラを見て、ルーチェはにっこりして、食べ始めた。 「ごちそうさまでしたー!」 店に声が響き、カランカランと鈴の音が鳴る。 一行は仲間を増やして歩き出した。 ルイとドリュと、バルダが馬に乗ってきてくれたおかげで、荷物はすべて、馬に詰めて、道中はかなり楽になった。 ローストビーフでおなかがいっぱいになったルーチェは、鼻歌を歌いだした。 流れるようなきれいな歌だ。 ふと、それに続くように透き通る声が響いた。 みんなも気づき、視線を一斉に向ける。 向けた先はリリだった。 彼女の声はとてもよくとおって、歌っている姿はまるで天使のようだった。 絡み合うメロディーは、とてつもなくきれいだった。 そして、リリのほうを向いて、ドリュは直立不動になっていた。 それをみたルイは、静かに笑う。 ルーチェはシャールにも歌うように促したが、彼女は歌おうとしなかった。そして、ただ、リリをじっと見ていた。 「なんで一緒に歌わねーの? ルーチェが誘ってるのに。」 オーラは不思議そうに聞いた。 「あんなきれいなリリの声に聞き入ってるドリュの邪魔しちゃだめでしょう?」 笑いながら答えた。 楽しそうな雰囲気の中、彼らは森が迫っているのを見た。 「このまま進むか?」 オーラが聞く。 「もちろん!!」 ルーチェが元気よく答え、そのまま進むことになった。 しかし、森は不気味だった。 「いやーな予感がしますね。」 レインが言う。 シャールとリリがうなずく。 「何か、いますね。」 シャールが言う。 「気配がするわ。 邪悪な感じはしないけど・・・。 何かしら?この感じ。」 リリも言う。 そして、 「見られてるよう・・・。」 三人はつぶやいた。 そのとおり、彼らが少し歩き、森の奥まで着たかなあと思われる頃、突然、クマが現れた。 「感じた視線はこれだったんですね・・・。」 レインがつぶやく。 くまは、彼らに襲いかかろうとする。 戦おうとしたその時、 「やめなさい。」 声が響いた。 その方向には、フードをかぶった女がたっていた。 クマは、とまり、彼女の指示に従い、森の奥に消え去った。 「助けてくれてありがとう!」 ルーチェが満面の笑みを浮かべる。 「いえいえ。 それより、こんな森を通ってどこへ?」 彼女の表情は見えない。 「リアドネアに。」 オーラが答えた。 「そんな遠くへ? おもしろそうですね! 私も入れてください!!」 彼女の提案にオーラはビビる。 「え??」 オーラ、ドリュ、バルダ、ルーチェはびっくりした表情だが、レイン、アマリリス、シャール、ルイは冷静だ。 「・・・。ま、まあ、いいよね?」 ルーチェが確認する。 彼らは頷く。 「じゃあ、宜しくお願いします!私は、ハルです!」 彼女の表情は、フードに隠れて見えない。 「さあって、遠くにきたけど・・・。これからどうしよう・・・。」 ハルを加えた9人は、森を抜けたところの宿にいた。 「どうやって、リアドネアに、向かうかだ。」 オーラは言う。 「うーん。ルートはたくさんあるよねえ。」 ルーチェも言う。 「??何を言っているんですか?」 キョトンとした表情の、レインとシャールがいた。 「ルートなんて、そんなたくさんありません。 たしかに、方法も、場所もいくらでもありますけど。」 レインが言う。 「リアドネアに、わたるには、王の許可が必要です。 まず、都に向かわなければ。」 シャールもつけたす。 「あー・・・。 でも、許可下りるでしょうか? オーラとルーチェは、徴兵令から逃げてきたんですよね。 僕も、奴隷の身ですし・・・。」 レインは困った顔をした。 「普通だったら、無理です。それどころか、戻されちゃう。」 シャールもうなずく。 ふと、シャールは思い付いたという顔をした。 「大丈夫です。考えがあります。」 彼女はにっこりしていった。 そして、レインに手招きをすると、耳打ちした。 レインの顔がだんだん笑い始める。 「そうなんですか!僕も、以前お話したことがあります。」 レインは笑顔で言う。 「だったら、話は早いですね。 あなたは奴隷から解放してもらえると思う。」 シャールもほほ笑む。 2人の話に着いていけない7人は、困惑していた。 「あの・・・。 ついていけないんだけど・・・。」 オーラが代表して言う。 「大丈夫、いずれわかるわ。気にしないで。」 2人は彼らに笑いかけた。 ー十日後。 彼らはすでに村を二つ、街をひとつ越えていた。 同時に金は4分の1ほど減っていた。 「ねえ、あとどれくらいで王都につくの?」 ルーチェが疲れた顔をしていう。 リリが地図を取り出し、広げる。 「おととい、この村を通ったから、この辺だと思うわ。」 冷静に分析する彼女。 「このペースで行くと、あと、4・・・3日ぐらいだと思う。」 ルイが言う。 「もうリアドネアも近いな。」 オーラが嬉しそうに言う。 「いえ、そうでもないですよ。」 きっぱりとレインが言った。 「王都の出す通行証で行けるのはリアドネアのカラデニス帝国から少し離れている小国です。 オーラたちはリアドネアで暮らすんでしょう? そこ、カラデニスと同盟結んでいるんです。 だから、徴兵令が存在します。20歳から25歳にかけて。 なので、そこでは暮らせません。 めざすのならば、リアドネアの奥のほうの国を目指さなければ、戦があります。 リアドネアには、田舎なんてほとんど存在しないですから。 ねえ?あなたたちは戦なんて絶対に参加したくないんでしょう?」 シャールは二人に問いかける。 2人は何か見抜かれているようで怖かった。 それほどに、彼女は真剣だった。 「いいですか? リアドネアは、ここ以上に検問だって厳しいんです。 だからこそ、あちらは有利なんです。 国境を渡るのには、ものすごく苦労するんです。 オーラ、ルーチェ。そんな生ぬるい覚悟であなたたちはここまで来たんですか?」 彼女の眼はしっかり2人を見据えていた。 2人は、旅の重さを考えさせざるを得なかった。 そして、オーラは思った。 シャールは何を考え、きたのだろうと。 ルーチェは思った。 彼女は何者なんだと。 レインとリリは、黙って彼らを見つめていた。 とても、優しい目で。 気まずい雰囲気の中、彼らは再び歩き出した。 夜になっていて、オオカミの遠吠えが聞こえる。 「オオカミさん?!こわーい!!」 ルーチェがオーラにしがみつく。 はあ、とため息をつくオーラ。 「心配しないでよ。 彼、そんなつもりないよ。」 ハルが言う。 「え?何?」 あっけにとられる一同。 「あれ?いってませんでしたっけ?私、動物と会話できるんです。」 平然というハルに全員びっくりしている。 ハルは笑った。 →→第26話へ スポンサーサイト
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Author:EIN ROMAN
・ルイ担当 紅(べに)
・ルーチェ担当 ダーク
・ハル担当 ショコラ
・アマリリス担当 灰璃(カイリ)
・レイン担当 うさ
・シャール担当 めいか
この6人で執筆しています。